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― 3 ―
それから、秋吉は仕事の無い時はほとんど毎日、少年 ― 相河陸斗に会いに行った。
いつもなら名刺を渡してそのままだったが、相河陸斗だけはどうしても落としたかった。
街にクリスマスの音楽が響く頃、陸斗の方から秋吉に電話がいった。
その日、秋吉は事務所での打ち合わせがあり、陸斗のところへは行かないでいた。
「はい、秋吉です」
『……相河です』
携帯電話から聞こえてくる陸斗の声に、寄り掛かかっていた椅子の背もたれから起きた。
打ち合わせでもやもやしていたところに掛かってきた電話に思いがけず、嬉しくて馬鹿みたいに大きな声を出した。
「やっとその気になってくれたの?」
『……いえ、まだ……』
小さな声だった。
「じゃあどうしたの?」
『…お話したい事があって』
「何?」
『会ってお話したいので、時間を作って頂けますか?』
「う…ん、明日の土曜日ならいいけど?」
『僕も学校が休みなので、その方が良いです』
「じゃあ、明日の10時半頃。場所は……」
『場所は学校のある駅で』
「分かった。じゃあ明日!」
『……はい』
秋吉は携帯電話を切ると、小さくガッツポーズをした。
よし、父親あたりが反対してるな。説き伏せて見せるぞ……。
思い、誰も居ない会議室のブラインドをあけ伸びをした。
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