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よし、今日こそ落としてやるぞー!
秋吉は手土産に事務所の近くにあるデパートでお菓子を買って下げている。
土曜日だったので、電車は遊びに行く人達が楽しそうにしていた。その中で、秋吉もはやる気持ちに歌でも歌いたかった。
駅に着いて改札口を出ようとしたら、後ろから秋吉を引き留める声がした。
「あの……秋吉さん」
振り向くと、杢グレーのパーカーにジーパン姿の相河陸斗が立っている。秋吉は恋人でも見付けたように‘ニッ’と笑った。
「相河君!待っていてくれたの?」
とぼけた質問だった。
相河陸斗は表情も変えずに応えた。
「会わせたい人がいるんので、来て下さい」
「おっ、ご両親に会わせてくれるの?行こうよ!」
やった!
思った秋吉は、今にでも改札口から出そうだったが、腕を取られて留まった。
取った相手、陸斗は憮然とした顔で溜め息をついた。
「……せっかちなんですね。隣の駅です」
そう言うと、背中を向けスタスタと秋吉を置いて先を歩いた。
「ああ、相河君待ってよ」
秋吉は小走りに追い掛けた。
電車の中でドア付近に立った二人は、秋吉が一方的に話し掛けていた。
「今日はいい天気で良かったよ」
陸斗は黙ってドアの硝子の向こうに見える景色を見ている。
「相河君、地味なんだね」
「普通の高校生って、こんなモノでしょ?」
「でも原宿あたりを歩いている子達なんか、頭金色だよ」
「そういう子がいいなら、そっちをスカウトしたらいいんじゃないですか……」
「僕は君がいいんだ」
秋吉はまた‘ニッ’と笑った。陸斗は視線を逸らして、外を見た。
「着きました」
言うと、ドアが開くと同時に先に出て歩いて行ってしまった。
「あぁ、相河君待って!………つれないなぁ……」
追って電車を降りると、走って陸斗を追い掛けた。
「……ここは?」
「見れば分かるでしょ?病院です」
「病院…って……」
陸斗が秋吉を連れて来たのは、駅から歩いて五分程の場所に建っている病院だった。
陸斗は無表情だった。
「行きますよ」
「ご両親のどちらか入院してるのーー、ちょっと待って!」
秋吉は、また、足早に先に行ってしまう陸斗を追い掛けた。
この子は何故こんなに先を急いでいるんだろう……。
秋吉は思わずにはいられなかった。
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