第二章 真実

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― 2 ― エレベーターの中で陸斗は秋吉につぶやくように話した。 「秋吉さん、どうして僕なんですか……他にも沢山いたでしょうに……」 「ん?」 秋吉が見ると、陸斗は顔を伏せて何かを我慢するように、右手の親指を噛んで左手はその右腕を支えていた。気のせいなのか、声が震えているようだった。 泣いて……いる? 秋吉にはまだ理由が分からなかった。ただ、自分自身で分かっている事……。 「相河君、君だよ。君なんだよ。絶対に君は……スターになれる!」 断言した。 聞いた陸斗は何とも表現のしようのない、淋しい自嘲したような笑みを浮かべた。 「秋吉さん……あなたに僕の背負っているものを背負う事が出来ますか?」 陸斗は消えるように言って、また強く親指を噛んだ。 どういう意味だ……。 総てを阻むような壁を造り、そのまま陸斗は黙ってしまった。秋吉も黙ってエレベーターに乗っていた。 エレベーターが指定した階に着き、黙って降りた陸斗に付いて秋吉も降りた。 先を歩く陸に着いて歩いて行った先……廊下の一番端の部屋だった。 「ここです」 部屋には『相河弘志』と書かれていた。 「お父……さんなの?」 陸斗は応えずに、病室のドアを開けて「どうぞ」と、秋吉を中に入れた。 個室だった。 そして、目の中に入ってきたものは……沢山のチューブを付け、幾つかの機械の真ん中に置かれたベットに寝ている男の人だった。秋吉達が部屋に入ってきても、ぴくりとも動かなかった。 陸斗はベットの傍らに立ち、男の人の右手を握り話し掛けた。 「弘志叔父さん、陸斗だよ……今日は天気から、少しカーテン開けようか……」 言って手を離すと、カーテンを少し開けた。窓からは冬の柔らかい陽射しが入り込んできた。 秋吉はドアに近い場所から動く事が出来なかった。 「相河……君。この人は…どなた?‘叔父さん’って?」 陸斗は淋しげに、少し微笑んだ。 「秋吉さん、談話室に行きましょうか……叔父さん、待っててね。ちょっと話してくるから」 言って病室のドアを開けると、秋吉を病室の外に促した。
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