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「ねぇ、1回でいいから“有紀”って呼んで?」
俺をまっすぐ見つめながら宮野は言った。
「有紀?なんでだよ。今まで通りでいいじゃねぇか。」
「だめなの!今じゃなきゃ…今呼んでもらわなきゃダメなの…」
叫んだ宮野の瞳からは涙が流れていた。
今じゃなきゃって、なんだよ!?
俺は意味が分からずただ立ちつくしていた。
「はは…いきなり変なこと言ってごめんね。
あたし、明日転校するの。」
切ない笑顔で笑うと宮野は話し始めた。
俺は黙って宮野の言葉を聞いていた。
「パパの仕事の関係でアメリカへね、、、あたし、生まれたのも育ったのも東京だから、誰も知らない場所に行くのが怖い。それにあたしはこの街が好きで、この学校も友 達も大好きで、どうしても離れたくない人だっている。」
俺は胸の奥に今まで感じたことのない違和感を感じつつも黙っていた。
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