序章 上

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 天界。  天と言っても地盤が雲というわけではない。そこは地球と同じように地面があり、海があり、島があり、大陸がある。そして天界で暮らしている人々もたくさんいる。  ただ、天界の人々が言う『現世』すなわち私たちが普段過ごしているところと違う点があるとすれば、天界は現世で亡くなったものたちが集う場所であること。が、それは少数派だ。どちらかと言えばもとから天界で生まれ育った人の方が多い。  現世でろくな死に方をしていない輩は天界に来ることすら許されないのだ。 ***  そんな天界に現世出身の女がいた。  名は『古川織姫(ふるかわおりひめ)』  現世での死亡原因は首吊りによる自殺。  一見すると天界に来れるか、来れないか悩むぐらいの死に方だったが、彼女の心は他のどの現世の人々よりも澄んでいて、自殺に至った理由は学校でのイジメだと分かれば、天界に届ける理由にしては十分だった。  まだ織姫が天界に来て半年とちょっと。  しかし、彼女はもう既に天界に馴染んでいた・・・・・・。 「ねぇ、オリヒメお姉ちゃん」  少女の声が地面から低い位置を飛んでいた織姫を捕まえた。
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