序章 上

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***  午後一発目の授業が始まった。  一面天然の芝生の上に立つ生徒たち。その中でも他の人より一回りだけ大きな翼が背中に見える生徒が1人。  そう。正天使、織姫。  しかも違うのは翼の大きさだけではなく、表情も他の生徒と違う。  大多数の生徒が緊張した面持ちで気を付けしているのに対し、彼女だけやけにニヤニヤしている。  みんなこの授業の講師を待っているのだ。  先ほどクラス全員が合同で何かを行うことはほとんどないと述べたが、これは一つの例外で、月に一回特別授業というのが設けられているのだ。  特別授業とはいつもの学習と少しかけ離れていて、難易度の高い実習をするのが主である。  そういった生徒たちには結構嫌われがちな授業を、織姫が待ち望んでいる理由は――― ――バサァッ―― 「うわっ」 「きゃぁ!」  突如、空から天使が舞い降りた。  正天使の織姫とも比べ物にならないほど翼の直径。真っ白な手足、腰の辺りまである綺麗な髪、頭には黄金のカチューシャ。  織姫のクラスの特別授業の講師、大天使『ランカル』が姿を現したのだった。
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