第一話・いらっしゃい

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第一話・いらっしゃい

最初の話はこの俺、信也が話す。 これはある町で起きた出来事だ。 5年前に一家4人が殺害られた事件があったろ? その事件のあとその家には幽霊が出るとかで誰も気味悪がって近寄ろうとしなかったんだ。 ところが、ある夏に大学生の2人が大学の卒業記念にその家に行ったんだ。 「なんか薄気味悪いな。」 「なんだ、高野ビビってのか?」 高野と呼ばれたほうはムッとして振り返った。 「うるせぇな、ビビってねぇよ。高橋こそビビってカメラ落とすなよ。」 高橋と呼ばれたほうはビデオカメラを片手に軽く笑った。 「そんなへまはしないさ。」 辺りはまだ5時だというのに薄暗いし肌寒い。 「おい、そろそろビデオのスイッチ入れろよ。」 「了解~。」 高橋がビデオのスイッチを入れて取り始めた。 2人は家の中に入ってみると5年もほったらかしで、荒れ放題だ。 「お邪魔しま~す。」 高橋がおもしろ半分でそう言った。 2人は一通り家の中を散策して行った。 最後に台所に行ってみるとそこには指輪らしきものが落ちていた。 「お土産発見~」 高橋がその指輪を拾いあげてポケットにしまいこんだ。 「お、おい!そんなもの拾うなよ。」 高野がそう言ったが、高橋は聞かない。 「まぁまぁ、気にすんなよ。」 結局そのまま何も起こらずにその家を出た。 2人はそのまま高橋のアパートまで行きさっき撮ったビデオを見ることにした。 「あっ、ヤベェ。」 「どうした?」 「ビデオ切るの忘れてた。」 「アホ。」 そんなこと言ってるうちにビデオの準備ができた。 「見ようぜ。」 そう言いながら再生ボタンを押した。 「お邪魔しま~す。」 高野がいきなり一時停止を押した。 「なんだよ。」 高橋が言う。 「もう一回見てくれよ。」 そういうと音量をさっきよりも上げて再生した。 「お邪魔しま~す。」 「いらっしゃい。」 女の人の声がした。 そのまま再生して行くと台所の場面になった。 「お土産発見~。」 そう言って高橋が指輪を拾い上げた時に 「返して!返して!」 また女の声がした。 「返して!わたしの指輪返して!」 その声はアパートの前まで聞こえた。
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