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「嫌ですか? 私の気持ち……」
「え……あ、いや」
「いや……なんですか」
途端に落ち込む凛は、俯き口を押さえていた。なんで俺はこんなにうろたえているんだ?
そう言う意味で言った訳ではなくて、言葉のあやというか何と言うか、とにかくそういうことなんだよ。
「だから、違うって! そうじゃなくてだな……」
「では……なんですか?」
さっきまでのは嘘かと思うほど、俺を見ている眼は真剣で怖い。
そんな目で俺を見るなよ。
お前の気持ちは嬉しいし、正直どうしていいのか分からないから、こんなに混乱している訳だよ。
「えっと、その……俺も、あの……」
「ハッキリ言ってください、章仁さん」
突然の事に、俺の方が驚いてしまった。いつもの凛からは想像も出来ないくらいの大きな声。
言ってから恥ずかしいのか、頬を赤くして少し俯いて俺を見ている顔はとても可愛い。
「私は、本気ですよ。今までずっと気付いて欲しく……だから、色々としました」
「あ、いや、その……だな」
「もう……章仁さん、優柔不断です。もしかして、私を焦らしてますか?」
モジモジとズレた事を話す凛は、俺を見ては眼を逸らしてまた見てはと落ち着きがなく挙動不審。
今回はいつものズレた行動ではなく、どうやら本当のようだ。
さすがに冗談でこういう事はしないと思うと言うか、思いたい。しかし、デザイン画にコレを書くあたりでズレてはいると思うけど、追求はしない事にしよう。
「分かりました。それでは、こうしましょう――」
「は……?」
凛が提案してきた内容に俺は言葉を失った。しかし、凛はごく当たり前のように俺を見て微笑んでいる。
やっぱり、ズレた奴だ。
こんな発想が出てくるあたり、常人とは違う世界に住んでいるんだな。
「返事待ってます。章仁さん……大好きです」
「っ!」
俯き加減に頬を染めて、微笑みながら教室を出て行く凛を俺はただ見送っていた。
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