気がつけば……

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重い体を引きずるように歩き始める。 しばらく歩くと人ごみも減り、街の喧騒も遠くになった。均等に並んだ街灯が暗やみを僅かに照らしている。 背後から追ってきているような気配はない。 どうやら街の人ごみを抜けて来たのが良かったようだ。 しかしここで安心はできない。たった1人のためにヘリまで用意するようなやつらだ。どこに潜んでいるかわかったものではない。 何度も道を曲がり重い体に鞭を打ち、まっすぐ帰れば15分のところを1時間程かけて自宅に辿り着いた。 俺の自宅、といってもアパートだが……… まともに職についていない俺にはピッタリというようなオンボロのアパート。 40年という歳月を過ぎた階段は1段登るたびにギシギシと音を立てる。 ポケットから鍵を取り出す……なんてことはない。 扉の前にかけられた色のくすんだ赤いポストの中を探り鍵を取り出す。 正直鍵をかけなくても盗られるものなど皆無だ。 部屋には着替えと布団。後は携帯電話の充電器くらいしか置いていないからだ。 取り出した鍵を鍵穴に差し込み捻る。ここで大事なのは扉を圧してやることだ。老朽化した扉の鍵は癖があるため簡単には開かない。 扉を押す。 重い体がやっと休めると気を抜いたその時だ。 バシュッ! サイレンサーを取り付けた銃が放つ独特の発射音。 部屋に意識を向けると窓際に立つ1つの影。その右手はこちらに向けられており、銃が握られているようだ。
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