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痛みはない。しかし突然のことに思考がフリーズしている。
「‘特隊’まで退けてしまうとはな……
さて、やけに遅かったが回り道でもしていたのか?銀行口座までわかっているんだ。住所なんかすぐにわかるさ」
聞き覚えのある声。
そう、先程建物に突っ込んだときに出会った顔に傷のある男だ。俺に向けられた右手をおろす。
その男の言葉を無視し。彼の右手を見た。体の影に隠れはっきりとしていなかったが、右手をおろしたことで月明かりに照らされ銀色の銃を手にしている。
俺はすぐに視線を落とす。
胸にあるのは弾痕……ではなく一本の棒のようなものが刺さっていた。
……針?
それを引き抜きながらまじまじと観察する。
が、次の瞬間視界が歪む。
「…なんだよ?…これは……悪い…冗………談……だ……ろ」
そのまま視界が真っ暗になり意識が遠退いていく。
薄れゆく意識の中、男の声が頭に響いた。
「……合格だ」
その言葉を最後に意識を闇に落とした。
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