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はぁっ……
はぁっ………
はぁっ…………
激しく脈打つ心臓、呼吸をするたびに痛く締めつけられる肺、上げることすら辛い脚。
それらに鞭を打ち街の暗闇を走り続けている……
ちょうど日付が変わる頃だろう。表通りは24時間人通りが絶えないこの街でも、一本裏の通りに入れば、切れかかったような灯がところどころを僅かに照らすばかり。生ゴミと小便が混じったような匂いが鼻孔を突く。
裏路地で右に左にと進み、いくつかわからないが曲がったところで壁に背を預ける。
肩で必死に息をしながら周囲の気配を伺うも、激しい呼吸が邪魔をする。
「……くそっ!」
小さく呟く。
なぜこんなことになっているのか、なぜ追われているか……
考えたところでわからない。
タタタ……
逃げて来たほうから僅かに聞こえる複数の足音。それが俺に恐怖と緊張を与えてくれる。
(落ち着け……)
ここで慌てたところで仕方がないのだ。
言い聞かせるように自分の胸元を強く握り、深い呼吸を繰り返し辛くなった肺を落ち着かせる。
その間に辺りを観察する。正面はしばらく行くと突き当たりになっているのか、ゴミの回収箱がいくつも置いてあり、溢れたゴミが散乱している。
左には十字になった路地を確認する。
さらに十字路の手前には、古びた非常ハシゴが垂れている。
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