203人が本棚に入れています
本棚に追加
/256ページ
異常を確認し終えると、肩で息をする体をすぐに起き上がらせ窓の外を見る。
「この建物の出入り口を閉鎖しろ!正面に三名、裏口に二名だ!上空の警戒もしっかりしておけっ!」
リーダーと思われる人物がそう指示を出すと窓から見える人影がなくなる。さすがにここからは上ってこれないだろう。
……っていうか上空って、ヘリまで用意してるのかよ?
俺、本当に何したんだ?
と、考えつつも窓に足を掛ける。
いくらなんでも逃げ込んだところから戻るなんて、余程のことがない限り考える人間は少ないはずだ。
腕に力を込めると体が持ち上がる。
「……なかなかやるようだ。私の部隊を撒いてくれるとは」
不意に響く声に体がびくっとなる。声のするほうに振り向いた。
そこに立っているのは黒に縦ストライプの入った高級そうなスーツを着た男。
照明がほとんどないこの建物の中では顔がよく見えない。
……いつからそこにいたんだ?
あまりにも突然のことに俺は激しく驚いているものの、それを表情に出すことはない。
「…ふむ、この状況に驚いているものの、ポーカーフェイスを貫くか。更に今の現状を冷静に判断しようとしているようだな」
俺の顔は窓から差し込む月明かりに照らされ、スーツの男からはしっかりと見えているようだ。
動いた様子はない。しかも俺はしっかり気配は探ったはず。この男が気配を消していたということか……
最初のコメントを投稿しよう!