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……ここまで他の奴らが来るのに5分ってとこか。とりあえず……ここは探りを入れとくか。
呼吸を整えながら俺は腕の力を緩め床に足を降ろす。今だに先程までの疲労からか、少し足が重い。
「…いきなりなんだがあんたらの目的は?」
短く質問した。
今までのことを考えればすぐに銃を出すことはまずない。殺しが目的であれば、すでに撃たれているはずだ。
スーツの男は俺の質問を無視して言葉を続けた。
「それにしても、まさか本当にこのルートで来るとは……やはり‘あいつ’にはかなわないな」
表情は全くわからないが頭をポリポリと掻いている。
「…質問に答えろ。目的は?」
俺は言葉に殺気を込め、いつもよりも低い声で尋ねた。殺気というよりは、怒気。性格上そんなに気の長い方ではない。
「おぉっと、すまない。少し考えていたものでな。
……目的は‘お前’だ」
スーツ男は俺を指差しているようだ。
「だからなんで俺なんだ?」
そんなわかりきった答えは望んでいない。俺の欲しい情報は‘なぜ俺なのか’ということだ。
「…今すぐには教えることはできない」
男はゆっくりと近づいてくる。徐々に月明かりを受け見えはじめた顔。
40代そこそこだろうか、陽に焼けた浅黒い肌に白髪混じりの角刈りで、いかにも‘軍人’だと言わんばかりの鋭い眼光をしている。その顔つきから日本人ではないようだ。彫りの深い顔がさらに表情を険しく見せている。
額から右頬にかけて大きな古傷がありスーツとはミスマッチな感じを受けるが、鍛え上げられ引き締まっているであろう体にはとても似合っているようにも思える。
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