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「…そうか。
なぁ、あんたらの狙いは本当に俺で間違いはないのか?」
俺の質問にスーツの男の動きが止まるが、すぐに男は口を開く。
「…沢渡遼、23歳。A型。神奈川県生まれ。両親は17歳のときに交通事故で他界し家族はなし。高校を卒業後自衛隊に入隊。任期を終え退職、その後トラックの運転手になったがすぐに辞め、現在はフリーター。
……どうだ?必要ならば銀行の口座も言うぞ?」
肩を竦めた。なんでも知っているようだ。
「……自分の銀行の口座番号なんかいちいちおぼえてねぇよ。
一体あんたらはなんなんだ?」
初めこそ驚いたものの、大きな組織であることは予測していたため、取り乱すことはない。
「…それも教えられないな」
「そりゃそうだよ、なっ!」
俺は踵を返し一気に加速する。必要最低限の情報は手に入れた。ここには、いやこの男にも用はない。
飛び込むように窓から出ると落ちるようにして回収箱のゴミの中へ突っ込んだ。かなりの衝撃だったが、ゴミがクッションとなり無事である。
重い体をなんとか持ち上げ這い出るが、体から変な匂いが漂っている。
まずは帰ったら風呂に入ろう……なんてことを考えながら、再び走り出そうとしたその時だ。
路地にはどこからか湧き出るように4つの影が現れる。
4人がそれぞれ同じ黒い戦闘服に身を包み、コンバットブーツにジャケットを着用している。
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