気がつけば……

9/12
前へ
/256ページ
次へ
着地すると同時に受け身の要領で前に転がり起き上がる。 すぐ振り返るとすでに2人はこちらに近づいていた。 激しい衝撃! 右からの回し蹴りをなんとか肩口で受けとめたが、そこにもう1人の足刀が俺の鳩尾あたりを捉えた! 俺の体は後ろへと飛ばされると壁に激突する。 その衝撃に肺に蓄えていた空気が漏れる。 本当に厄介だ。 追い討ちをかけるように2人は間合いを詰めてくる。荒い呼吸を無理やり押さえ込み俺は一目散に駆け出した。 正直、分が悪い…… 逃げるのはあまり好ましくなかったが、引き際を見誤ると酷い目に合うのは間違いない。 駆け出すとすぐに肺が痛くなり、呼吸の度に苦しさを覚える。蹴られた鳩尾も痛みが奔る。 ……ここまで体力が落ちてるのか……くそっ! 脚が重い。 振り返ることもなく、ただひたすら走った。無理やり脚を持ち上げながら路地を抜けなんとか街に出る。 溢れかえった人ごみの中を滑るように抜けていった。 しばらく走るとさすがに限界を迎えてしまい脚を止める。 行き交う人は俺に冷ややかな視線を送ってくれていた。確かに全力疾走する大人など滅多に見るものではないし、ましてや街中で息を荒げるまで走る奴などほとんどいない。 変な目で見るんじゃねぇよ。
/256ページ

最初のコメントを投稿しよう!

203人が本棚に入れています
本棚に追加