1 少女

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少女はお嬢様といった空気を持っていて、金持ちの娘とかそういう類の人間である事は容易に想像できた。 「止めて下さい」とか細い声で言っている。 次の瞬間には「辞めろよ」と声が出ていた。 「ああっ?お前…海藤じゃねぇか。どうした。今、辞めろって言ったか」と主犯だと思われる及川真也が言った。 「嫌がってる。辞めた方がいい。先輩、そういうのは男にやるもんですよ」 彼らに目を付けられるのは問題だったが、彼女を助けるのが優先だと考えた。 「逃げるよ」と言って彼女の細い腕を掴んだ。 「あ、はい」と彼女は言った。 漫画のように「待ちやがれ」とか言って追いかけてくることはなかった。 実際、追いかける事をばかばかしいと思っているのだろう。 「大丈夫?」と自然な流れで訊いた。 「大丈夫です」と彼女がこっちを見た。 その瞬間、光一は凍りついた。 彼女は間違いなく、日本人同士の間に生まれた子だろう。 しかし、彼女の目は緑色をしていた。 驚いたが、それに触れるのは失礼だと考えて、質問はしなかった。 その日はそのまま、バスに乗り家に帰った。 それがいわゆる始まりになるとは考えもしなかった。
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