「テキサス革命」

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 「ジーザス。」 海に戻ったキングサーモンは 体勢を立て直すためか テキサスサーファーとの 距離を広げていく。 彼も後を追う。 海から突き出たヒレは 先程のクルーザー以上の スピードで彼の視界から 遠ざかっていく。  彼は口笛を高く鳴らすと 波が動きを見せ始める。 テキサスサーファー本来の 力が十二分に発揮され ヒレとの距離を 一気に縮めていく。 水面下にぼんやりと見える キングサーモンは 彼を更に仰天させた。 クロールで泳いでいるのである。 「熱いぜ。お前ただの サーモンじゃないな。」 最初は未知との遭遇だったが 同じ海を渡る者同士として キングサーモンに対し 彼は驚きと 親近感を 芽生えさせていた。 そして キングサーモンも また 同じものを感じていた。 「私もよ。貴方名前は?」 彼も名を名乗り 互いに 先程の敵意をというものは 微塵にも残っていなかった。 二人は今 波を共有している 時間を楽しんでいたのだ。 「それにしても 立派なボディーだ。 完璧な仕上がり。 一体どんなトレーニングを?」 その質問が出てきた途端 キングサーモンは口を 閉ざした。 「すまない。 聞いちゃまずかったか。」 キングサーモンは 少し笑いながら 首を横に振った。 「いいのよ。 この筋肉は毎日何百キロも 泳いだ後にプロテインを 体に刷り込ませている 成果の賜物よ。」 "サーモンなのにチキンか"。 テキサスサーファーは 訳も分からず微笑んだ。 「貴方こそ立派なボードね。」 「こいつはジョニー。相棒さ。」 ボードを紹介した時の 彼に キングサーモンは 一瞬にして心を奪われた。 太陽のように眩しい笑顔に 目が潰れてしまう程 眩しい白い歯。 眩し過ぎて見えない。 何より その顔は サーフィンを愛して止まない 内から溢れる情熱を キングサーモンは 身を持って感じたのだ。 「素敵よ。どう? 私と海のバカンスでも。」 魚とはいえ レディーからの 誘いを断る訳がない 彼の答えは二つ返事だ。 「気を付けな。俺が乗るのは 波だけじゃないぜ。」 「あら。私も乗るのは得意よ。」 「おっと。こいつは 楽しめそうだ。」
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