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その後 気絶した
キングサーモンの尾を掴み
食材提供の変わりに
民家の台所を借り
現在に至る。
新鮮なままいただく為に
あえて命を取らなかった。
「私が男だから?
ナニが付いていることに
何の問題があるの?」
テキサスサーファーは
棒に興味はない。
彼が欲するのは
あくまで穴である。
「新鮮なサーモンじゃ。」
台所を提供した家の主が
現れ 喋るサーモンの
生きの良さに目を光らせた。
鮮度が落ちる前に
刺身にしてしまえと
家主は容赦なく
キングサーモンの
体に包丁を突き刺した。
早朝に響く断末魔。
キングサーモンは
声にならず 吊るされている為
逃げる術もなく
ただ悶絶している。
家主の手は止まらない。
まずは 内蔵を根こそぎ
取り出した。次に精巣。
手際に迷いがなく
止まることもない
熟練された捌きに
テキサスサーファーも
驚きを隠せない。
それもそのはず。
家主は元築地の棟梁。
通称 "神捌き"である。
「塩漬けが一番じゃよ。
切り身は刺身も旨いが
ルイベもいける。」
半解凍の刺身の事である。
「タタキもいいな。」
二人はサーモン談話に
花を咲かせているが
キングサーモンは
昇天の手前を逝き来している
状態である。
家主はどこで獲ったのかを
彼に問うと キングサーモンは
不信な笑みを浮かべる。
「中村怪人軍団を
敵に回すことになるわ。」
キングサーモンの
掠れた声は二人には
届かず 家主はサーモンの
頭を切断し まな板に
乗せ 調理を続けたのである。
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