‡第零幕‡

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月を隠すようにどんよりとした雲が空を覆う闇夜―― 街が昼とは違う裏の顔を出し始めた頃。 一人の少年は路地を駆け巡っていた。 少年の後ろからは手に金属バットや鉄パイプを持ち、様々な怒声をあげながら追うものがいた。 「てめぇ!待てやコラ!」 と追うものの一人が叫ぶ。 「待てと言われて待つバカはいないって。」 少年は苦笑いを浮かべ、呟く。 少年がしばらく狭い路地を走っていると、行き止まりになっている広い空き地に出た。 「あ~この道抜けれると思ったのに………ダルいなぁ。 どっかで間違えたみたいだな。」 少年は独り言を言いながら空き地の中央に立った。 「ようやく、追い詰めたぞ! 手間取らせやがって!」 と追いかけていた者も空き地に入っていく。 (三面はビル、入り口はあそこだけか。) 少年は追い詰められたと言うのに、怯えるわけではなく挑発的な笑みを浮かべていた。
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