思い出は彼方に

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きーんこーんかーんこーん 一限目の講義が始まるチャイムが鳴った。 日差しが眩しいカーテンが、さぁっと優しい風になびいた。 思 い 出 は 彼 方 に Ⅱ …………………………… チャイムが鳴り終わっても 一限目の講義を取っていなかった僕らは、静かに座ったまま沈黙が続いていた。 …………… 私は止まっていた手を再びキャンバスに向け、暗い夜の深海に光をかざした。 アレン君との沈黙は珍しかったけど、今は別に苦でも何でもなかった。お互いが違う空間を漂っているようだった、。窓から差し込む風に似て、すがすがしい感覚だった。 「あのね、…」 先に沈黙を破ったのは私のほうだった。 アレン君はこちらを見たまま視線を外すことはしなかった。 「…えっと、」 私は言葉を発すと同時に固まってしまった。さっきまで言おうとしていた言葉は、頭の中を数回駆け回った後、どこかへと流れて消えてしまった。 私はどうしよも無く思い、顔を少し伏せた。 アレン君もそんな私の心情を察してか、何も言わずただ風を感じていた。 ………… 窓の外から笑い声やなんかが聞こえてきて、程よい雑音だった。 僕は風に身を委ね、生徒達の会話などを遠巻きに聞いていた。 「彫刻の課題さ~…」 「後でそこのケーキ屋さんに…」 「昨日でたCDのー…」 どれも聞き慣れたようなどこにでもある内容だった。別に何かを期待して聞いていた訳ではないのだけれど、。 そんな事をぼんやり考えていると、 「  」  ふと、聞き慣れた声が、窓の外では無く、ドアの向こう側から聴こえた。 「アレン、リナリー!」 ドアの前には橙頭の気の抜けた笑顔を向けてくる青年と、しかめっ面をしたさらりとした黒髪の青年が、こちらを向いて立っていた。 …………………………… 小鳥がさえずるハーモニー、シャワーを浴びる天使像 王子が姫にキスする瞬間。 …思い出は彼方に     Ⅱ 午前3時の銀時計 その瞳に映るのは、あなた。
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