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夢を見ていたんだと思う。
目の前にある光景はありふれた無機質なものだったのだけれど、確かにさっきまでそこに、
「極彩色が、…」
広がっていたのだ、。
まだチカチカとした光が目に残っている。
あまりにも鮮明に、それは消える事なく一定のリズムを刻むので、僕はそれが自分の心臓の音なんだろうかと思った。
……………………………
「アレン君」
僕は朝早くに食堂に行くべく長い長い廊下をひとり歩いてた。
「おはようございますリナリー。」
くるっと後ろを見ると先程の優しい声の持ち主であるだろう彼女が、にこりと僕に笑いかけた。
「一緒に食堂まで行かない?」
………………
「ラビと何かあったの?」
山のように積み上げられた完食済みの皿の向こう側から、すでに自分の朝食を済ませたリナリーが僕に問いかけてきた。
「ふへっ?(へ?)」
まだ口内に大量の食べ物を詰め込んだままだったので、いつにも増してまぬけな反応だったんだろうなぁとうっすら思う。
「にゃんでひょんなほほひふんへふか?」
不作法かなぁと思いつつ、残った皿がひとつだけだったので、僕はその皿の上に乗っていたかぼちゃのタルトー…ホールサイズを、手掴みでひょいひょい…と口の中に放り込んだ。
皿と皿の隙間からわずかに顔を覗かせたリナリーは苦笑いを浮かべ、
「飲み込んでからでいいわよ。」
と 短く言った。
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