それは今にも消えそうで

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うわ何コレ気持ち悪っ!! ラビは必死に両手で口を抑えた。 「アレン、お前…」 ラビが苦しそうに白髪の少年を見上げると、少年は何もいわずに(自分が巻き起こした)目の前の惨状を、ただじっと見つめていた。 ちょっ、アレン酷くない?可笑しいのはいつもの事だけどさ、いくらなんでも今日はやりすぎだろ!? もっとさ、こう、ヤバイとか悪かったなとか無いわけ!? そうして居る間にも物凄く不愉快な味が口の中を浸食していき、口内に薬のような(しかし決して人が食べるようなモノでは無い)絵の具の味が広がる。 それだけでもとても耐え難いものなのに、同時にリキュールの(どうやらオレンジ・キュラソーらしい)(辛うじてさっぱりとしたあのオレンジ果実の味がした)アルコールが喉を熱くさせる。 (ああ、もったいない。普通に飲んでいればきっと美味しかったのだろうに、) という思いを巡らしているうちに、酷い吐き気が襲ってきた。 「うぇ…っ」 ラビは立ち上がり口内の異物を吐き出すべく洗面所に向かおうとー…したのだが、あまりにも強い衝撃に耐えられず、その場に倒れ込んだ。 濃い味が混ざる訳でも離れる訳でもなく、口の中をぐるぐると回っている。 ラビは白髪の少年が、何故か悲しそうに笑っているのを見た後、重い瞼に耐えられず、もうろうとした意識を手放した。 「おやすみなさい」 少年の言葉は、ラビの耳に届くことなく、静まり返った廊下へと消えていった。
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