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「あ、ラビ、お帰りなさい」
白髪の少年はじっとこちらを見つめている橙頭の青年に言った。
「…ずいぶんヒドい事になってんな」
ラビ、と呼ばれた青年は、絵の具が飛び散った床を指差して言った。
白髪の少年が苦笑いを浮かべると、橙のー…ラビは、
「しょーがないさ、。
まぁ元からお前の家だしさ、文句は言わないさ。」
と言った。そしてそれに、ただな、新聞紙くらいはひいとけさ。とが付け加えて。
すると正面に座っている少年は、
「だって面倒くさいじゃないですか。
大体課題の締め切りを明日になんかに縮めた教授が悪いんですよ!」
ぶぅ、とほっぺたを膨らませて少年は返した。
ラビは、少年が「リキュール炭酸割りで宜しくー」と言うのを遠巻きに聞き取りながら、はいはい、と台所へと向かった。
……………………………
台所からアトリエへと戻ると、白髪の少年は膝を抱えて顔をうずめていた。
「アレン?」
ラビが心配そうに問いかけると、少年は顔を下に向けたまま、返事を返した。
「その絵の赤色の屋根を見て下さい。」
何があるか分かりますか?
そこまで言うと、アレンは少し顔を上げ、ラビが持ってきたリキュールを片手で掴んで、瓶ごと口に運んだ。
ラビはじっと目を凝らして屋根を見た。
何の変哲もないただの赤い屋根だったが、ふと、赤い絵の具の中に何か黒色の物体が交ざっていることに気付いた。
細い触角がひとつふたつ、
長い脚がいつつむっつ。
「アレン、これって?」
橙の髪を揺らしながらラビが問いかけた。
「僕みたいでしょう?」
本当はその家の屋根の色、初めは白だったんです。だけど、その蚊が潰れて血が着いちゃったから、僕、赤色に染めたんです。
ほら、その蚊ももう逃げられない。その赤色から。
「まるで僕のみたいに。」
……………………………
君の髪いろあかいろだね。
いえいえこれはオレンジ色ですよ。
じゃあその瞳のいろは?
危険、進入禁止。
あかいろ。
……………………………
でもまだ君は変わらないでいてね。
はい。出来るならば。
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