第十五章

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散々嫌がったリクだったが、実際にハスノと2人で術前の出場が決まると、生来負けず嫌いで凝り性な性質が発揮された。 人生は楽しまねば勿体ないと彼は信じているし、事実そう行動するようにしている。 「ついに今日ですね、リク」 「まあ、あんだけやったんだから、上手くいく……はず」 わざとらしく拳を握り、リクはそう言って笑顔を作った。ハスノはつられて笑っていた。 「はーい、いちゃいちゃしなーい」 リクとハスノの間に顔を滑り込ませてきたのは、チハヤだ。 面倒な気持ちもあり、自分で術前にならないようにしたが、彼女は後になって気付いた。リクと2人きりの時間が確保されるのだと。 それからというもの、歯噛みする気持ちで、仲良く触れ合う2人を見てきた彼女の精神は、穏やかではなかった。 「も、もう出発の時間ですか?」 「前の集団はもう行ったわ。あたし達も行きましょ。 いざ、東領!!」 「「おー!!」」 「……行こう。他クラスが冷たい目をしている」 イスラにそう言われて、皆が周りを見渡すと、確かにAクラスで残っているのは彼女達4人だけだった。あとはもうマブチの描いた陣によって、目的地へと転送されているのだろう。 メレンはいまだ意識を回復せず、テルシアも学園を離れたきりになっている。 幾許かの寂しさは禁じ得なかった。
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