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「じゃあ、準備しとくわね。
ごめんね~。学園に行っても、<塵>の業務はこなすから」
「謝るくらいなら行かないでほし…」
ごきん、と何かが折れるような不気味に骨が鳴る音。チハヤの両の拳が、万力の如くきつく握り締められた音だった。
「ねえ、聞いて。あたしね、自覚はあるの」
「な、何の?」
「でも、どうしようもないみたい。リクの事になるとね、感情や行動にちょっと抑えが……」
チハヤが呟く。笑顔だ。目線こそジンに向けられているが、焦点はずっと遠くに合わせられている。瞳孔は開いたままだ。
妙に明るい声が、余計に不気味さを煽った。
「え、鋭意努力致します!!」
満足そうに頷くと、ようやく目に通常の光を取り戻したチハヤは、意気揚々と部屋から出ていった。
「ふぅ……。
メレンの次はチハヤ。隊長格が抜けるのは、キツいが……まぁ、仕方ない。
本当なら、チハヤも学生を満喫してるはずの歳だもんな。
人材育成と補強、考えとかないと。また仕事が増える……って何か忘れてるような。
あぁっ!!」
彼の記憶を呼び覚ましたのは、目の前のコートだった。チハヤの言葉を思い出す。
『金髪変態野郎に聞いちゃったの。そのコートを返しにきててね』
彼がメレン
への復讐を誓った瞬間である。
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