第一章

6/7
前へ
/670ページ
次へ
「確かにこの歳で社会人として働いてるんだからさ、それなりにすり減ってはいるんだけどさ。でも仕方なくない?俺にばっか責任来てるし。そもそもおかしくない?幹部だって気付いたらさっさと塵辞めてるし。普通大人のくせに、こんな若造残して消えたりする?ああ、嫌だ……」 常日頃から気にしていた事を人から直に言われて、心の傷の瘡蓋が剥がれたようだ。ぶつぶつと俯きながら言葉を吐く。 昔から感情を表に出そうとしないリクとは性質も対照的で、ジンは自分の感情を素直に態度に出す。明るさも暗さも、強さも弱さも、何もかも。 彼は世界にその名を轟かせ、東西南北すべての政府に影響力を持ち、干渉すらできる。目の前の姿からは、その威厳など想像できない。友人に対したときは、彼もただの若者だった。 多少の時間は要したが、どうにか持ち直して会話を続ける。 「…なあ、リク。念のため、こんなテンプレートでお約束なこと言いたかねえんだけど」 「何かな」 「学園で正体はばれないように。 色々くだんねぇ苦情とか、いちゃもん付けられるから。何かにつけて、制服のボタンの数にさえ文句つける輩がいる世の中だから。 如何せん、良くも悪くも大戦の"英雄"なんだし。面倒事は御免でしょ?」 「了ー解ー。そこは適当にいくさ。良い加減はそれなりに得意なんだなー、これがまた。 じゃあそろそろ本当に行くから」 喜色満面、リクはひらひらと手を降りながら部屋を後にした。
/670ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20838人が本棚に入れています
本棚に追加