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戦争で活躍した<塵>の幹部達は、戦後、下界を救った英雄として喝采を浴びた。国や各地域の組織における、相応の地位を得た。
無論、最高戦力を保有し、世界で最も権威を得て、権力という力を与えられた<塵>の幹部として残り、その身を尽くす者もいた。
そのどちらにもーJOKERーの姿は無かった。
彼は彼の役を演じ終えるや否や、表舞台から忽然と消えた。彼が愛用した特殊な武器、<涅槃(ねはん)>と共に。
そして時は流れる。下界にとって悪夢のような大戦から3年が過ぎ、全てを日常が塗り潰し始める。
ようやく平穏が世界を呑み込み始めていた。都市部を中心に、とっくに復興の目処は立ち、人々は大戦前の生活を取り戻していった。
勿論、折り目のついた紙と同じで、人々から大戦の記憶が消えることは無かったが、静かに心の奥底へと沈んでいった。
今ーJOKERーは、重厚な調度品が無造作に置かれた、格式と倦怠を混ぜ合わせて作られた高級ホテルの一室で、旧友と相対している。
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