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「ともかく!!」
顔はまだ上気したままだが、ことさらに威厳を含ませた声で、チハヤが言った。
「行事予定によるとね」
「今吹き飛ばされたあれね」
「そう、紙なんて吹き飛ばされるためにあるのよ。
さておいて、今月は東領遊学があるの」
「遊学?」
リクには全く耳慣れない響きだった。
待ってましたとばかりに、チハヤはにんまりと笑った。想定内の質問がきたのだ。事前に学園長のマブチに聞いておいた、想定内の質問だ。
「遊学っていうのは、文字通り、遊びと学びよ。
土地の文化や人間に触れ、己の見聞や価値観の深化を図るの」
「丸暗記したような説明をありがとう。
旅程は?」
「二泊三日。あっという間ね」
「つまるところは、観光旅行か。いいねー、楽しみ」
「んー、まあ観光もあるけど、メインは違うわ」
そう言うと、どこからともなく取り出した紙を示す。
「東領の学園との交流。毎年の恒例らしいんだけど……」
「けど?」
「良い意味でも、悪い意味でも、優劣を争う間柄らしいわ。魔術に勉学、運動、部活に至るまで、相手に負けるのは許せはしない」
露骨にリクの表情が曇る。
「毎年毎年加熱してるの。去年の怪我人の数見た?
杞憂だろうけど、リクも気をつけてね」
怪訝な顔をした彼の目に、申し訳無さそうな笑みを浮かべたチハヤが映った。
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