第十五章

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「残念だけど気をつけようがない」 そう言い切るリクは愉快そうだった。長めの前髪がさらさら揺れた。 「部活も勉学も、代表に選ばれない限りは出番がないんだろ?」 彼は結局部活に加入はしなかったし、前回の試験も追試扱いになっている以上、自分にお鉢が回ってくる可能性は極めて低いと判断していた。 チハヤにすれば苦笑せざるを得ない。 「よく見て」 彼女が指差した先には、はっきりと"術前披露"の文字。 術前とは文字通り、魔術の腕前。学園交流の行事として、確かに存在している。 「……うちにはハスノがいる」 「代表は2人よ」 「チハヤは?」 「あたしはここ。挨拶の係。花束交換の大役を果たすわ」 「俺?」 「術前披露はもってこいだと、満場一致で決まったわ。目立ち過ぎたのよ」 彼女は悪戯っぽく笑った。他人事ならばその表情に魅力を感じただろうが、今はそうではなかった。 「何をするの?何をするのが望ましいの?」 「例年で言えば、有らん限りの魔力でもって、奇跡を起こすことかしら」 「ハードル高いな、おい」 夜も更けた。彼は寝床に向かおうと、立ち上がった。 途端に背中に声が当たった。それは彼をひどく気落ちさせた。 「術前は盛り上がりの最高潮よ」
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