第十五章

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「これが……東か!」 思わずリクは声に出していた。彼の目には、照りつける太陽を受ける、くすんだ朱色で統一された屋根が並ぶ街並みや、石畳で舗装された道。大通りを歩く人々は、街を囲む砂漠から吹く、砂を運んでくる風を避けるために、頭に白い布を巻いている。 街角で店を構える屋台の果物や香辛料、山海の収穫物は、喧騒と共に物理的にもオリエンタルな香りを届けてくる。 「すごいですね!にぎやか!でも……」 「そうね、少し乾燥が気になるわね……」 「そこ!無駄口をたたいてないで、急げ!集合していないのは、あと4人だけだ」 思わず観光でも始めかねない4人を、いつの間にか現地の人同様に白布を被って怒声で迎えたのは、教官のユーリだった。よく見れば、片手には鮮やかな断面の果実。 「教官」 「言いたいことも分からんではないが、急げ。すぐそこにはもう相手方の学園だ」 「……了解でーす」 多少の理不尽は飲み込んで、リク達は目的地へと向かう。
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