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黒服は一旦落ち着いた様子で、言葉を切った。そうでもしなければ、とりとめの無い話が尽きることはないようだ。
「さて、もう少しだべっているのも悪くないけれど」
「今日は-joker-の立場として話を聞いて欲しい、と 。そう聞いてきた。<塵>の総長」
黒服の穏やかな顔は崩れない。ただ妙に青年離れした圧のある空気が生まれた。
白服は場に呑まれぬよう、少しばかり身を前に傾けた。今や世界中でその一挙手一投足が注目される<塵>の総責任者である彼は、至って真剣な面持ちで応じた。
「なあ、学歴ってどう思う?」
-joker-は無言。言い終えるや否や、重い空気に不自然な亀裂が入った。ジンは熱湯を注がれた氷がよく似た音を出すことを思い出した。
「これは友人として言うぞ。お前な、ちゃんと考えてるか?自分の将来を。
雇用不安、老後、貯蓄。最終学歴は?」
「……中卒」
「この学歴社会で、中卒はな……」
取って付けたような僅かばかりの微笑みでごまかすが、黒服はぴくりともしない。ただ、じっとその大きな瞳で白服を見据えている。
沈黙が支配を強めた。
「俺には幸いにもコネがある。まぁお前にも共通の人脈ではあるが」
ジンは話しつつも、ばつが悪そうにちらちらと黒服の感情が読み取り辛い眼を覗き見て、その反応を窺っていた。
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