第2章 思いがけない来訪者

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21時過ぎ、ディナータイムの最後のお客が帰っていった。 「ありがとうございました」 私はドアを開けてお辞儀しながら、馴染みのお客を見送った。 「じゃあ、また来ます」 男性がそう言うと、女性の方が手を振った。 私も軽く手を振った。 二人が楽しそうに会話をしながら駐車場に歩いて行った。 そんな姿を見ると、この仕事をやっていて本当に良かったと、心から思える。 「お疲れさま!」 私は厨房の片付けをしている勇作に声をかけた。 「摩美もお疲れ」 「珈琲飲む?」 「そうだな」 勇作は洗い場の水を止めると、手を拭いて出てきた。 カウンターで珈琲を淹れて、窓際のテーブルに腰掛けた勇作の前に置いた。 「サンキュ」 勇作は軽く微笑むとカップを口にした。 私も自分の分を置いて、勇作の前に座った。 勇作は私を見て、もう一度にこっとすると、窓の外を見た。 私もつられて窓の外を見た。 今夜は、ほぼ満月だ。 外は月明かりでけっこう明るい。 濃淡はあるが、青一色の世界が広がっている。 まあ、この辺りは、月が無くても、満天の星空が広がって、暗いと感じたことはない。 じっと見ていると、青い世界の中に動くモノを見つけた。 しばらくすると、ソレは足下に転々と灯りをつけた店への道を上がって来た。  
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