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「…あたし、見たのよ。伸太郎が女とアパートに入っていくところ」
「…ああ、咲だろ」
なんとなく、展開はわかっていた。
いつものパターンだ。
いつも咲を浮気相手だと勘違いされる。
<浮気相手>だなんて俺にとってはかわいいものなのに。
「ずいぶん簡単に言うのね」
「簡単もなにも…」
一層責め立てる姿勢のマキに嫌気がさして溜息まじりに、独り言のようにぼそりと言った。
だが、あいつはそんなつぶやきも聞き逃さなかったらしい。
「じゃあなんなの?」
「…………」
答えられなかった。
どう言えば納得してまた笑うんだろう。
もういっそ、さっさと振ってくれた方がましだ。
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