それぞれの思いⅠ

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電車を降りて改札を出ると近くの小洒落た喫茶店へと足を運ぶ。 マキとの待ち合わせはいつもそこだった。 店に入ると時間より早く着いたのに、すでにマキが湯気もたっていないコーヒーを前に神妙な面持ちをして待っていた。 「待った?」 「ううん、別に」 向かいの椅子に座って決まり文句のように言う。 そんな俺を見るとマキは微笑を浮かべて軽く首を振った。 マキがぬるそうなコーヒーをすすっている間に俺も通りがけのウェイトレスにすみませんホットコーヒー、と声をかける。 ウェイトレスはにこりと商売用の笑みを浮かべてかしこまりました、とだけ残し去っていった。
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