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「紗夜子さん、ごきげんよう。」
「ごきげんよう…」
エスカレーター式の学校では皆もうすでに紗夜子の事情を知っているし
放課後の予定などを聞くものはいなかった。
しかも紗夜子は学園内でも結構な有名人でもある。
幼少の頃からいくつものコンクールに入賞していたからだ。
紗夜子は特定の友達こそいなかったが
年齢より落ち着いて見える物腰や人当たりの良さから、特に嫌われることはなかった。
けれど
家の事情で学校の諸活動にあまり関わることが出来ない事を抜きにしても
紗夜子は同じ年頃の娘が近付きがたい雰囲気を持っていた。
感情こそ露わにしないが
凛として、どこか芯の強さがある…
そして誰もが認める整った顔立ち…。
長く艶やかな黒髪に色白な肌、切れ長だけれど決して小さくはない目…
そんな紗夜子に尊敬や羨望の目を向けても、友人として親しく接する友達はいなかった。
紗夜子もそれを不満に思ったことはなかった。
決して軽蔑などの意味ではなく
「私はこの人たちとは違うのだ」
と理解していたからだ。
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