鬱屈

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  「………!?」 部屋の中はシーンと静まり返っていた。 そこには古い猫足のピアノがあるだけで誰の人影もない。 窓が開いて、白いカーテンが微かに揺れていた。 ―そんな…  私は確かに、ピアノの音色が止んでから直ぐに部屋に入ったというのに… 音色が止んでからこの部屋を出た者を誰も見ていない… なのに― 部屋には出入り口は一カ所しかない。 あとは窓があるだけ。 しかし此処は二階。 窓から外に出たとは考えにくい。 ましてやそんな馬鹿なことをわざわざする人間がいるのだろうか…。 一体誰が…。 紗夜子は暫し呆然と立ち尽くしていた。 カチャ。 扉の開く音とともに母が部屋に入ってきた。
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