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「…親戚という訳か」
「はい、従兄弟になります」
エドゥアールはルドルフを振り返り、ルドルフも小さく頷きました。
「……」
ジュリアスは胸の奥で感情がさざめくのを感じていました。
「エレーヌ、ちょっと来てくれ」
「…エドゥアールです」
「……失礼」
困ったように笑うエドゥアールに、ジュリアスは一つ咳払いをして、言いました。
「エドゥアール、ちょっと来てくれないか」
「…はい」
促され、エドゥアールはジュリアスの後に続きます。
「────!?」
奥の間に入った途端、エドゥアールは強く腕を引かれ、抵抗する間もなく壁に押し付けられて唇を塞がれていました。
隙間から強引にねじ込まれた熱に、エドゥアールは驚きを隠せません。
少しでも逃れようと顔を背けようとしましたが、ジュリアスはそれを許さず、追い立てました。
思うように息もつけず、肺が悲鳴を上げています。
「…は……っ…」
エドゥアールの口唇から甘い吐息が漏れたのを聞き、ジュリアスはようやくエドゥアールを解放しました。
そして、こつん、と額と額を合わせます。
「……」
「……」
言葉はなく、荒い息だけが響いています。
息がかかる距離で見つめると、エドゥアールも濡れてゆらめく瞳で見つめ返していました。
ジュリアスは大きく息を吐いて、エドゥアールを抱きしめます。
「…遅いっ」
「っ……」
苦しい程の力に、エドゥアールは息をつめました。
「…ジュリアス、顔を見せてください」
「……」
ジュリアスは力を緩め、促されるままに体を離しました。しかし逃がさないためなのか、ジュリアスの腕はエドゥアールの腰に回されていましたが。
そんなジュリアスに、エドゥアールは苦笑しつつ、そっと手を上げその頬に触れました。
「…こんなに痩せて……」
エドゥアールは複雑な思いを口にします。
ジュリアスが乱暴に扉を開けて入ってきたのを見たとき、自分の記憶の中の姿とのあまりの違いに、声が出そうになったほどでした。
けれども、初対面の筈でそれを口にするわけにもいかず、エドゥアールは表情を変えずにいることがやっとでした。
尤も、多少表情を変えたとしても、非常識な姿で現れたジュリアスに対する非難だろうと、誰もが思ったことでしょう。
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