新たなる出会い

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「これから仲良くしてくれるかな」 「ええ、もちろんよ。…あのね、私、お姉さまが大好きだったの」 「…うん」 「だから、時々はお姉さまを思い出して泣いてしまうかもしれないけれど…、許してくれる?」 「…もちろんだよ。それだけエレーヌを愛していたということだからね」 「…ありがとう、……お兄さま」  アンジェラは消え入りそうな声で、エドゥアールを兄と呼びました。 「…兄と呼んでくれるのかい?」 「お兄さまではないの?」  エドゥアールの言葉にアンジェラは体を離し、きょとんとした表情で小首を傾げます。 「いや、兄だよ」  微苦笑を浮かべ、エドゥアールは答えました。  アンジェラも笑顔で続けます。 「お兄さまのことを教えて。お兄さまのお体はよくなったの?」 「そうだよ」 「じゃあ、一緒にいられるの?」 「そうだね。アンジェラは嫌?」 「そんなことないわ」  アンジェラの言葉に、エドゥアールは笑顔を深めます。  けれど、その笑顔にアンジェラの笑みが消えました。 「アンジェラ?」  アンジェラはエドゥアールの肩に顔を埋めました。  その小さな肩が震えています。  エドゥアールの笑みがエレーヌに重なって見えたようで、エレーヌを思い出して泣いているようです。  エドゥアールはそっと背中を撫でました。アンジェラが落ち着くように、何度もゆっくりと。  やがてアンジェラは顔を上げ、泣き笑いの表情でエドゥアールを見つめます。 「お姉さまと同じ匂い…」 「……」  自分の匂いは自分では分かりません。  エドゥアールは微苦笑を浮かべることしかできませんでした。 「あ、あのねっ お姉さまの匂いも好きなの! すごく落ちつくの、だから…────」  アンジェラなりに気を遣っているようです。  それに気付き、エドゥアールはくすりと笑いました。 「ありがとう」  エドゥアールの笑顔に頬を染め、アンジェラはエドゥアールの肩に再び顔を埋めました。 「…アンジェラ?」 「…お兄さま、お願いがあるの」 「うん?」 「今日、寝るときに本を読んでくれる?」  以前もエレーヌに時々頼んでいたお願いです。 「いいよ」 「良かった」  エドゥアールが即答すると、アンジェラは恥ずかしそうに微笑みました。
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