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「…アンジェラ。父上と母上は私たちが仲良くなれるか心配しているようなんだ。今から一緒に仲良くなったことを報告してくれるかな?」
「もちろんよ」
アンジェラは笑顔で答え、エドゥアールの手を引きました。
エドゥアールはほっと胸を撫で下ろし、小さな手に引かれて立ち上がりました。
二人の様子に、王も王妃も一安心したようです。
それから兄妹仲良くしているけれど、アンジェラは時折エレーヌを想って泣いていました。
それもエドゥアールを気遣い、隠れて泣いているのです。
アンジェラの気遣いを無駄にしないよう、エドゥアールは気付かない振りをしていましたが、愛しい妹の涙を止めてやる手立てはないものかと思案する日々が続いていました。
しかし、結局は他者が何とかしようとも、アンジェラ自身がエレーヌの死を受け入れるしかないのです。
そのことをエドゥアール自身も理解し、傍で見守ることに決めたのでした。
「────…訓練所だ」
ジュリアスの言葉に、エドゥアールは現実に引き戻されました。
文字通り、訓練に励む若者たちの熱気が伝わってきます。
「…エドゥアール?」
ルドルフが小声でそっと名を呼びました。
エドゥアールは笑みを向けることで、何もないことを伝えます。
「…どうかしたのか?」
「いえ、何でもありません」
エドゥアールはジュリアスにも笑顔で答えました。
「……」
ジュリアスは何か言いかけましたが結局は何も言わず、先を案内します。
訓練をしていた者たちはジュリアスの姿に慌てて手を止め、その横にいるエドゥアールの姿にざわつきました。
目立つことが好きなウォルターが、事態に対応しようと駆けつけます。
「ジュリアス様。本日はどのような御用でしょうか。…それにこちらは?」
流石にエドゥアールを前にしてもウォルターは顔色を変えることなく、またジュリアスに対しても構えることなく軽い口調で尋ねます。
「セリシンのエドゥアール王子とルドルフ殿だ」
「…そういえば、セリシンからの使者がいらっしゃると聞いていましたが、本日でしたか」
「相変わらずの早耳だな。まったく、どこからの情報だ?」
「それは企業秘密です」
ウォルターは悪びれることなく答えます。
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