新たなる出会い

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 ジュリアスも答えが得られるとは思っていないのか、構わずに続けます。 「邪魔をして悪いが、少し場所とダグラスを貸してもらえるか?」 「…構いませんが。立ち合っていただけるのですか?」 「ああ。ルドルフ殿にはダグラスに稽古をつけて貰おうとおもってな」 「…そのような光栄に預かり、ダグラスも喜びましょう」  感情の読めない表情でウォルターが答え、近くにいる者にダグラスの呼び出しを言い付けました。 「…他所の国の兵士に稽古をつけるのか?」  ルドルフは小声でエドゥアールに囁きます。  その囁きにエドゥアールが答えるよりも先に、ジュリアスが振り返ります。 「普通に打ち合ってもらって構わん。ダグラスは若いが、見所があると俺は思っている」 「可愛がって居られるのだな」 「まぁ、そうだな」  ジュリアスは笑顔で答えました。  エドゥアールも口元に笑みを浮かべています。 「…俺はどうすれば良い?」  ルドルフはエドゥアールの耳元に口を寄せました。  エドゥアールは笑みを浮かべたまま、答えます。 「普通に、と言っているし、私もルドルフの腕前を知らしめたいと思っているよ」 「そうか」 「そうだよ」 「わかった。遠慮はしなくて良いのだな」 「でも、油断は禁物だ」  エドゥアールはやんわりとルドルフに釘を刺すことを忘れませんでした。  ルドルフも意味深に片眉を挙げて見せました。  そうこうしているうちに、ダグラスが進み出ます。 「エレーヌさまっ!?」  エドゥアールを間近で見たダグラスは、思わず口から出てしまったというように、慌てて口を押さえました。  そんな素直なところも変わらずで、エドゥアールは笑顔で答えます。 「エドゥアールです」 「ダ、ダグラスと申します」  エドゥアールの笑顔にどぎまぎしつつ、ダグラスは慌てて最敬礼で答えました。 「今日はこちらのルドルフがお相手します」 「お手柔らかに」 「あ、こちらこそ、お願いいたします」  ルドルフにも丁寧に頭を下げ、ウォルターの指示で場所を移します。  そんな2人を眺めながら、ジュリアスは尋ねました。 「ルドルフ殿は強いのか?」 「見てのお楽しみです」 「…楽しそうだな」 「はい」 「……」  笑顔で答えるエドゥアールに、軽い苛立ちを覚えます。  間接的にルドルフのことを自慢されているようで、ジュリアスはおもしろくありません。
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