薬の使い途

11/16
前へ
/60ページ
次へ
意見、質問を送ってきたのは、買った客の内、どちらでもなかった。   まだ、薬を買っていない3人目の客だった。     「『ピュンキエル皇帝カプセル』の件ですが、私は今日、注文をしたのですが、販売を控えると言うことで断られました。広告とは異なる事実ということでしたが、どこがどう異なるのか教えて頂けませんか?本当に『立たなくなる』薬があるのでしたら是非、売っていただけないでしょうか。」     何度読み直してみても、この客が求めているのは『立たなくなる』薬だ。発情するか否かは関係なさそうだ。 しかも、かなり切実に薬を求めているようにも思える。     すぐさま俺は、送り主への返答メールを送った   「ご意見、ご質問ありがとうございました。当社は、例の薬を、立たないイコール発情しないと、勝手な当方の結び付けにより、受験生に向けて発売いたしましたが、それは間違いであったため、販売を自粛させて頂きました。『ピュンキエル皇帝カプセル』は立たなくなるだけの薬であり、理性を抑える薬ではありませんでした。広告に偽りがあった事、深くお詫び申し上げます。まことに申し訳ありませんでした。尚、それでも『立たなくなる薬』としてお買い求めいただけるのであれば、喜んでお譲りいたします。」       これで明日、「買う」と返事がくれば、それは正にこの薬の使い途を見つけた人なのであろう。   売る側に使い途がわからない商品を、買い求める客がいるとは不思議な感覚だ。   何に使うつもりなのか是非教えてもらいたいものだ。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加