薬の使い途

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次の朝、早速返事が来ていた。   「是非、お願いします。2組買います。絶対立たないですよね?」     この、相手は、やはり絶対立ちたくない理由があるのだ。 しかも2組買うということは、ちょっとやそっとの事ではない。もしかしたら毎日使うつもりなのかもしれない。 何だろう。気になる。使い途が気になる。 しかし、そんなことは聞いてはいけないだろう。   買った客に、何に使うのかと、売った側が聞くのは変な話だ。   しかも、これはかなりデリケートな部分に触れることになる。  会社の信用問題に発展する恐れもある。    だいたい、ヒット商品とは、生産者や販売側が、使う用途に合わせたターゲットに向けて「これは良い物」だと売り込み、それが最初は僅な利用者の間で噂になり、そかから、世に勝手に広がって行くものだと思う。   売る側にそういう意識も、努力もないまま売れたりはしない。     努力したくとも、使い途も決まっていない物をどう努力すればいいのだ。     この薬に出会ってから薬のことばかり考えている気がする。 1人とはいえ買い手が見つかったわけだから、少しこの件からは離れてみようかと思う。 別にこれは売れなくても会社の損害にはならない。   やるべき仕事だけ終わらせたら、たまには早く帰って妻の愚痴でも聞いてやろうか。  
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