使われる『薬』

5/13
前へ
/60ページ
次へ
とにかく、三浦に話してみるしかない。     「それはおかしいな。考えうる欠陥はないはずだが・・・しかも、ついこないだまでは、リピーターだけでも相当な売れ行きだったはずなのにな。」     三浦にも、原因はわからないらしい。     「客が減ったというだけで、いなくなったわけじゃないだろ?値段が高すぎるから買い続けることが出来ないのかもしれない。もう少しすれば、値段を半分にしても今まで通りの利益は得られるようになる。そうすればまた客が飛び付いてくるんじゃないか?」   三浦の意見も間違いではないと思うが、どうも納得がいかない。   「耳にする話では、飲んでる人間の数が減っているとは思えないんだ、むしろ増えているとも思えるくらいなんだが」   俺は、感じる違和感をそのまま口にした。     「まさか・・・」   三浦が何か思い当たったように考えこんだ。     「何だ?何か気づいたのか?」     「いや、まだなんとも言えないよ」     「何かあるなら言ってくれよ」   俺は会社を挙げて大量生産に金を注ぎ込んでいる。 解らないまま客がいなくなったじゃ済まされない。     「いや、もう少し様子をみよう。きっと大丈夫だ」    三浦の言葉尻からは何か確信めいたものが感じられた。 三浦がそう言うのだから大丈夫なのだろうと思える。  これが俺たちの信頼関係なのだろうか。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加