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胸から刺されていた刀を抜かれると、その人間は鮮血を噴水のように飛び散らせながら、さながら支えを失った人形のように力なく倒れた。
男は悪夢を見ているようだった。
一番信頼していた人間の行っていることが信じられなかった。
床はペンキをぶちまけたように、紅々と光っている。
「……なに……やってんだ……」
床に倒れているかつての同胞を、まるで巨匠が創ったオブジェを鑑賞するかのように、恍惚と魅入っているその仲間に言った。
……いや、まだ仲間だと思いたかった。
殺人鬼は、ゆっくりと男の方に顔を向けた。
その表情は――
至福の悦びを見つけた――
笑顔だった――
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