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よく焼けたトーストをかじると、芳ばしい香りと共に乾いた音が響いた。
私はいつものようにニュースを見ながら朝食を食べていた。私が目にしている不思議な板からは、次々に流れる司会者の朗らかな顔と能天気な音楽が流れている。
重苦しく体を引きずるように、スーツ姿の父が奥の部屋から出てきた。まだ完全に眠気が治まっていないのか、瞼は重々しく中途半端に開けられている。
「おはよう……」
「おはよう」
くぐもった小さい声で、眠そうに挨拶をしてきた。それに応えて私はいつも通りに挨拶を返す。
「…………」
母が何も言わず、朝食を無造作に丸テーブルの席に着いた父の前に置く。
だが、父はそんなことには一切構わず、朝食を食べている最中に新聞を読みはじめた。父の悪い癖であるが、もはや母は咎めようともしない。
「………………」
テレビから流れる騒騒しいアナウンサーの声も、窓から降り注ぐ清々しい朝日も、虚空へ吸い込まれていくようだった……。
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