2年1ヶ月前

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「すまない、ケンタ」 渋谷のカフェでシュウはケンタに深々と頭を下げていた。 「いいって兄ちゃん、しょうがないじゃん」 「いや、本当にすまない、今回はお前に約束してたのに…」 「いいってば、今回の映画が実質兄ちゃんの初監督の映画でしょ? 主題歌まで決められるわけないって! ましてやオレみたいなインディーズでもCD出したことない奴の曲を映画の中に使えるはずないじゃん」 「…ケンタ」 「マジ気にしないでよ、あ、兄ちゃんの荷物兄ちゃんの新しいアパートに送っておくね」 あくまで笑顔でそう言い残し、店を出たケンタは意味もなく山手線に乗った。 -何も考えたくなかった- ただ自分が情けなくて涙がボロボロと溢れた。 シュウに負けない程努力はしたつもりだった。 シュウの成功を誰よりも願っていた。 努力は必ず報われると信じていた。 悔しくて、虚しくて、ただただ溢れてくる涙を止めることができず、子供みたいなしゃっくりをあげていた。 そしてその日からケンタの「夢」への熱は一気に冷めていった。
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