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寒い……。
針を刺すような痛みで、俺はゆっくりと瞼を開いた。
それでも晴れることのない暗闇。
自分の姿も見えない程の暗さのせいで、だんだんと不安が襲ってきた。
「【光球】」
俺の手のひらに浮かぶ光の球。
それにより、俺の周りだけ月に照らされたように明るくなった。
どうやらここは訓練所のようだ。
俺は携帯を取り出し、時間を確認する。
「11時……」
つまり俺は、あの後そのまま放置されたことになる。
おそらく翔達も魔王には逆らえなかったんだろう。
「は、っくしっ……!」
それにしても寒い。
今は4月。暖かくなってきたとは言え、まだ少し寒い時期だ。
それに加え、夜の11時に制服だけで放置とは。
鬼だな……。ここまですることないだろうに。
「っくしゅっ!」
再び勢いよくくしゃみが出る。早く帰ろう。
俺は立ち上がり、砂を払って立ち去ろうとした。
その時、誰かのうめくような声が耳に届いた。
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