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「いや、えっと……とりあえず入るか?」
如月は俺の問いかけに小さく頷き、ズカズカと遠慮なく入っていく。
「そういえば鍵……返してもらうの忘れてた」
扉を閉めるときに思い出したけど、翔に鍵を貸したままだ。
「まっ、いいか。明日返してもらお」
そしてリビングに移動すると、如月はすでにソファーに座っていた。
ただその表情は硬く、手を握りしめているところを見ると緊張してるんだろう。
「何か飲むか?」
優しい俺が緊張をほぐしてやろうと思って言った言葉なのに、如月のヤツは、
「じゃあ、アールグレイで。無いならアッサムでもいいわよ」
……は?
紅茶の名前なのはわかるが、コイツは……
「……そんなのあると思うか?」
「じゃあ次来るときまでに買っときなさいよ」
理不尽、図々しい、何様だ?
それにまた来ること確定かよ。
だけど心の広い俺は怒りを堪え、温かいココアを出してやった。
「ありがと」
渡したときに少し見せた笑顔。
それを見ただけで、さっきまでの怒りはどこかへ吹っ飛んでしまった。
ホント、甘いよな……俺。
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