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「ハァ……ハァ……ハァ……」
くそっ!あの新入生の力を見誤っていた。
もっと慎重に戦っていれば……!
「ハァ……ハァ……ここまで来れば……大丈夫だろう」
「どうかな?」
俺はビクッとして来た道を振り返る。
そこには赤髪の男が余裕の表情を浮かべて立っていた。
「二宮 龍牙……」
思わず彼の名前を漏らしながら後退る。
「おいおい、そんな恐がるなよ」
そうは言われても身体が勝手に動く。
一年生の中でも五指に入るほどの実力をもつ彼に勝てるはずがない。
逃げるしか……。
「逃げるなんてつまらないマネだけはするなよ?」
ダメだ。見透かされてる……。
どうすればどうすればどうすれば……。
「アアァァァァァ!」
気付くと俺はハンマーを手に彼に殴りかかっていた。
「そうそう。全力で来い」
彼はニヤリと笑い、自身の武器である槍を出す。
勝つ必要はない。一瞬でも逃げる隙をつくれば。
俺は力一杯ハンマーの柄を握り締める。
だが、振ることはできなかった……。
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