イレギュラー

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一見すると何の変哲もない太い木。 だけど男が腕を引くと、木の根元から木屑が飛び散った。 一瞬遅れて根元から上の幹が傾く。 俺達が唖然と見守る中、木は轟音を響かせながら地面に倒れた。 切り倒したのは糸だろう……。 いや、もはやワイヤーに近い硬度だ。 「わかりましたか?この糸は魔力を流すことであんなこともできます。人の肉を裂くことなどあれより容易い。つまり、一度でも捕まればキミ達の命はないということです」 背筋がゾクッとする。 捕まったら終わり……何だよその命懸けの鬼ごっこは。 糸を使ってる時点で鬼ごっこよりたちが悪い。 「龍牙、どうすんだよ?」 「決まってるだろ……」 そう言うや否や、龍牙は高く跳躍して燃えている糸に絡まった槍を掴む。 炎に当たっていたせいか、槍を引くと糸はあっさりと切れた。 「要は糸に捕まらなければいいだけの話だ!」 それをどうするのか聞いてるんだよ! と、心の中で叫びながら龍牙の姿を目で追う。 龍牙ならホントにできるかもしれない……。 だったら……。 俺も龍牙の後を追うように跳躍して刀を掴む。 だったら俺にできるのは龍牙を信じることだ。  
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