イレギュラー

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「ああぁぁぁっ!」 男が手刀を放つ直前、叫びながら男に突っ込む赤い影。 手に握った槍の矛先を男に定め、一直線に突撃を仕掛ける。 「皐月は連れて行かせねぇぞっ!」 あっという間に距離を詰めた龍牙は身体ごと槍を突き出した。 防御の構えも取っていない相手に背後からの一撃。 今更振り向いたところで槍の矛先はすぐそこ。 ――喰らった! と誰もが思ったはずだ。 だが現実は俺達の幻想を簡単に打ち砕いた。 「危ないな。後ろの嬢ちゃんに当てるつもりか?」 止められた……。 剣も魔法も使ってない。素手で。槍の柄を掴んで。 「嘘……だろ……」 「直撃してなかったのか火属性なのか、どちらにしろお前は俺の魔法のダメージが少なかったみたいだな。 でもあんなに睨まれちゃ誰でも気付くぞ?」 男は余裕に満ちた声でそう言うと、龍牙の制服を掴んで引き寄せ、腹部に膝蹴りを叩き込んだ。 「がっ!」 「龍牙!」 「……来んな!逃げろ!」 駆け寄ろうとする如月を止め、龍牙は必死に男の身体にしがみつく。  
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